エネルギーの換算方法

世界的にCO2をはじめとした温室効果ガスの排出量が増加し、それが原因と考えられる環境破壊や異常気象が深刻な問題になっています。そこで日本では、 「エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法)」と「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」という2つの法律により、温室効果ガスを一定以上排出する事業者に対し、国に排出量を報告することを義務付けています。これらの法律では、エネルギー消費量をジュールなどの熱量表示だけではなく、原油換算やCO2換算で表示します。

こちらでは、 「エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法)」と「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」の基本的な概要と、「原油換算」と「 CO2換算」という2つのエネルギー消費量の表示方法について説明します。

エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法)とは

エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法)は、第一次オイルショックを契機に省エネルギー対策を強化・促進するために1979年に制定された法律です。当初の省エネ法における規制対象は、工場と非住宅建築物の2分野でしたが、時代の変化に併せて規制対象を拡大。平成20年度改正では「 ①工場等」「 ②輸送」「 ③建築物(住宅・非住宅)」「 ④機械器具」の4分野に、平成25年度改正では「 ⑤電気事業者」を追加した5分野になりました。

省エネ法では、それぞれの分野においてエネルギーの効率的な利用と節電(電気の需要の平準化)に関する義務が決められ、違反者に対する指導・助言・勧告・命令・罰金等の罰則が規定されています。

制度の対象 義務
工場等 一定以上エネルギーを消費する事業者 電気の需要の平準化を考慮したエネルギー消費量の届出・削減努力、エネルギー管理士等の選任等
輸送 一定以上の規模の輸送をする事業者、荷主 電気の需要の平準化を考慮したエネルギー消費量の届出・削減努力等
建築物 一定以上の規模の住宅・建築物を建てる者 住宅・建築物の新築・改築・設備改修時に省エネ性能評価の届出、電気の需要の平準化の努力等
機械器具 一定以上の量の機械器具の製造・輸入をする者 省エネ性能の向上努力、性能表示、電気を消費する機械器具に係る電気の需要の平準化に資する努力等
電気事業者 電気事業者 電気の需給状況の開示、電気の需要の平準化に関する計画の作成・公表等

省エネ法の対象は、企業全体(本社、工場、支店、営業所など)の年間エネルギー使用量(原油換算値)が合計1500kL以上になる事業者です。該当する事業者は、エネルギー使用量を企業単位で国に届け出て、特定事業者の指定を受けなければなりません。また、コンビニエンスストアやオフィス、百貨店などの業務部門のエネルギー消費量が増加しており、フランチャイズチェーンも特定連鎖事業者として規制対象となり、事業全体のエネルギー管理を実施しなければいけないケースがあります。

平成30年度改正では、グループ企業の親会社が「認定管理統括事業者」の認定を受けた場合、親会社が子会社まで含めて省エネ法の義務を一体的に履行することができるようになりました。また、省エネを推進するために助成金や税制措置といった支援策も講じられます。

平成30年度改正 認定管理統括事業者の認定制度(工場・事業場規制の場合)
平成30年度改正 認定管理統括事業者の認定制度(工場・事業場規制の場合)

出典:経済産業省 資源エネルギー庁

地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)とは

地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)は、京都議定書で策定された地球温暖化対策を推進する目的で1998年に施行されました。 「エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法) 」と同様に一定量以上の温室効果ガスを排出する事業者は、以下のガスの排出量を算定し、国に報告することを義務付け、国はデータを集計・公表します。エネルギー起源CO2の報告は、省エネ法定期報告書を利用した報告が認められています。温対法では、それ以外にも5.5ガスとして温室効果ガスが指定されており、これらもCO2換算の値で報告する義務があります。

温室効果ガスの種類 対象者(特定事業所排出者)
・エネルギー起源 CO2
※燃料の燃焼、他社から供給された電気または熱の使用に伴い排出されるCO2
・すべての事業所の原油換算エネルギー使用量合計が1500kL/年以上になる事業者(フランチャイズチェーンについても一つの事業者とみなします)。
・原油換算エネルギー使用量が1500kL/年以上になる事業所を設置している場合には、該当事業所の排出量も内訳として報告します。
・上記以外の温室効果ガス(5.5ガス)
①非エネルギー起源 CO2
②メタン(CH4)
③一酸化二窒素(N2O)
④ハイドロフルオロカーボン類(HFC)
⑤パーフルオロカーボン類(PFC)
⑥六フッ化硫黄(SF6)
・次の①および②の要件を満たす者。
①算定の対象となる事業活動が行われており、温室効果ガスの種類ごとにすべての事業所の排出量合計がCO2換算で3000トン以上になる事業者。
②事業者全体で常時使用する従業員数が21人以上。温室効果ガスの種類ごとに排出量がCO2換算で3000トン以上になる事業所を設置している場合は、該当事業所の排出量も内訳として報告します。

省エネ法と温対法の比較

「エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法)」と「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」の相違点などを以下にまとめました。

エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法) 地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)
対象者 特定事業者(事業者単位)、特定連鎖化事業者(フランチャイズチェーン単位) 特定事業所排出者(事業者・フランチャイズチェーン単位)
義務内容と対象
・報告および届出
①定期報告書(原油換算エネルギー使用量・判断基準の厳守状況ほか)
②中長期計画書
③エネルギー管理統括者等の専解任届
・目標
中長期的にみて年平均1%以上のエネルギー消費の低減
①温室効果ガス排出量の算定・報告
・エネルギー起源CO2
・上記以外の温室効果ガス(5.5ガス)
②調整後温室効果ガス排出量の報告
ほかの制度との関係 - 【義務内容の対象】の「①温室効果ガスの排出量の算定・報告」の中のエネルギー起源CO2の報告に関しては、省エネ法の定期報告と対応可能。
該当要件 すべての事業所の原油換算エネルギー使用量(燃料・熱・電気)の合計使用量が1500kL以上 ①すべての事業所の原油換算エネルギー使用量の合計使用量が1500kL以上
②温室効果ガスの種類ごとにCO2換算3000トン以上
報告時期 【義務内容と対象】の①と②は、毎年7月末日まで【義務内容と対象】の③は、専解任のあった日から最初の7月末日 毎年7月末日まで
報告先 【義務内容と対象】の①と②は、事業者の主たる事業所(本社)所在地を管轄する経済産業局および該当事業者が設置しているすべての工場等に関わる事業の所轄省庁
【義務内容と対象】の③は、事業者の主たる事業所(本社)所在地を管轄する経済産業局
事業所管轄大臣
罰則 エネルギーの使用の合理化計画に関わる指示および命令に従わない場合、またはエネルギー管理統括者等の不専任の場合等は、100万円以下の罰金。
定期報告書および中長期計画書の報告を行わなかった場合等は50万円以下の罰金。
報告を行わなかった場合、あるいは虚偽の報告を行った場合は、20万円以下の過料。

原油換算によるエネルギー使用の計算方法

原油換算によるエネルギー使用量は、本社およびすべての工場・支店・営業所・店舗等で使用した燃料・熱・電気ごとの毎年度の使用量を集計して計算します。集計した使用量に燃料・熱および電気での換算係数を乗じて、それぞれの熱量[GJ(ギガジュール)]を計算します。算出した熱量[GJ(ギガジュール)]を合計し、年度間の合計使用熱量[GJ(ギガジュール)]を求めます。合計使用熱量[GJ(ギガジュール)]に0.0258(原油換算係数[kL/GJ])を乗じて、1年間のエネルギー使用量(原油換算値)を算出します。以下の表に燃料使用量や電気使用量を当てはめることで原油換算値を求めることが可能です。

CO2換算によるエネルギー使用の計算方法

「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」では、CO2換算によるエネルギー使用量を報告する必要があります。エネルギー使用量をCO2換算で算出する場合は、以下のCO2排出係数を乗じます。

燃料の種類 単位発熱量 CO2排出係数
発熱量当りCO2換算 単位量当りCO2換算
原料炭 29.0 GJ/t 0.0898 tCO2/GJ 2.61 tCO2/t
一般炭 25.7 GJ/t 0.0906 tCO2/GJ 2.33 tCO2/t
無煙炭 26.9 GJ/t 0.0935 tCO2/GJ 2.52 tCO2/t
コークス 29.4 GJ/t 0.1078 tCO2/GJ 3.17 tCO2/t
石油コークス 29.9 GJ/t 0.0931 tCO2/GJ 2.78 tCO2/t
コールタール 37.3 GJ/t 0.0766 tCO2/GJ 2.86 tCO2/t
石油アスファルト 40.9 GJ/t 0.0763 tCO2/GJ 3.12 tCO2/t
コンデンセート(NGL) 35.3 GJ/kl 0.0675 tCO2/GJ 2.38 tCO2/t
原油 38.2 GJ/kl 0.0686 tCO2/GJ 2.62 tCO2/t
ガソリン 34.6 GJ/kl 0.0671 tCO2/GJ 2.32 tCO2/t
ナフサ 33.6 GJ/kl 0.0667 tCO2/GJ 2.24 tCO2/t
ジェット燃料油 36.7 GJ/kl 0.0671 tCO2/GJ 2.46 tCO2/t
灯油 36.7 GJ/kl 0.0678 tCO2/GJ 2.49 tCO2/t
軽油 37.7 GJ/kl 0.0686 tCO2/GJ 2.58 tCO2/t
A重油 39.1 GJ/kl 0.0693 tCO2/GJ 2.71 tCO2/t
B・C重油 41.9 GJ/kl 0.0715 tCO2/GJ 3.00 tCO2/t
液化石油ガス(LPG)※ 50.8 GJ/t 0.0590 tCO2/GJ 3.00 tCO2/t
石油系炭化水素ガス 44.9 GJ/千Nm3 0.0521 tCO2/GJ 2.34 tCO2/t
液化天然ガス(LNG) 54.6 GJ/t 0.0495 tCO2/GJ 2.70 tCO2/t
天然ガス 43.5 GJ/千Nm3 0.0510 tCO2/GJ 2.22 tCO2/t
コークス炉ガス 21.1 GJ/千Nm3 0.0403 tCO2/GJ 0.85 tCO2/t
高炉ガス 3.41 GJ/千Nm3 0.0964 tCO2/GJ 0.33 tCO2/t
転炉ガス 8.41 GJ/千Nm3 0.1408 tCO2/GJ 1.18 tCO2/t
都市ガス 44.8 GJ/千Nm3 0.0499 tCO2/GJ 2.23 tCO2/t
[出典]
・単位発熱量
地球温暖化対策の推進に関する法律(平成22年3月改定)における設定値
※エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)での設置値と同等
・CO2排出係数
発熱量あたり-同上設定値×44/12
単位量あたり-単位発熱量×発熱量あたりのCO2排出係数
内訳) 単位発熱量 CO2排出係数
発熱量当り 単位量当り
プロパン 51.24 0.0585 3.00
n -ブタン 49.64 0.0604 3.00
i -ブタン 49.77 0.0603 3.00

※LPガスとは、プロパン70wt%、ブタン30wt%の混合ガスであり、それぞれの数値は以下となります。
出典:「2005年度以降適用する標準発熱量の検討結果と改訂値について」

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