2030年(省エネ法)対策

日本政府は、2011年3月の東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて、2014年4月に2030年に向けた第4次エネルギー基本計画を策定しました。その計画は、大きく分けて「原発依存度の低減」「化石資源依存度の低減」「再生可能エネルギーの拡大」という3つです。そして2018年7月に「第5次エネルギー基本計画」として2030年、さらに2050年を見据えた新たなエネルギー政策の方向性をまとめました。こちらでは、エネルギー基本計画に基づく「2030年(省エネ)対策」を紹介します。

エネルギー基本計画とは

エネルギー基本計画とは

エネルギー基本計画は、2002年6月に制定されたエネルギー政策基本法に基づき、2003年10月に策定されました。省エネ対策の基本は、「環境への適合(Environment)」「安定供給(Energy security)」「経済効率性の向上(Economic efficiency)」という3つの“E”と、「安全性(Safety)」の“S”を加えた「3E+S」を満たすことです。この「3E+S」を満たすエネルギー政策を実現するために、中長期的な基本方針を示したものが「エネルギー基本計画」です。エネルギー基本計画は、エネルギー政策基本法に基づいて少なくとも3年ごとに検討され、必要があれば変更し、閣議決定されます。

第5次エネルギー基本計画について

エネルギー基本計画は、少なくとも3年ごとに検討し、必要があれば変更し、閣議決定することが定められています。直近では、2018年7月に新しい計画が閣議決定されました。これが「第5次エネルギー基本計画」です。今後は、第5次エネルギー基本計画を元にエネルギーに関する政策が検討されます。そして製造業に携わる企業も省エネ実現のために行動が求められます。

第5次エネルギー基本計画では、エネルギーの「3E+S」の原則をさらに発展させた「より高度な3E+S」を実現するために、以下の4つの目標が掲げられています。

3E+S + より高度な3E+S

安全性(Safety) + 技術・ガバナンス改革による安全の革新
安定供給(Energy security) + 技術自給率向上/選択肢の多様化確保
環境(Environment) + 脱炭素化への挑戦
経済性(Economic efficiency) +自国産業競争力の強化

その背景には、温暖化対策に関する国際的な枠組み「パリ協定」で目標と掲げられた脱炭素化に向けた技術間競争、地政学リスク、国家・企業間で本格化する競争など、社会情勢の変化があります。この情勢の変化も踏まえて、第5次エネルギー基本方針では、2030年までに実現すべき内容と、2050年に向けた目標の2つを整理しています。

2030年に向けた対応

  • 温室効果ガス26%削減
  • エネルギーミックスの確実な実現

2050年に向けた対応

  • 温室効果ガス80%削減を目指す
  • エネルギー転換・脱炭素化への挑戦

今回のコラムでは、目下の目標である2030年までに実行すべき内容と、製造業に携わる皆様ができる対策を中心に説明します。

2030年に向けた省エネ対策とは

第5次エネルギー基本計画において、政府は2030年までに「温室効果ガス26%削減」「エネルギーミックスの確実な実現」という2つの大きな目標を掲げています。特に省エネ対策として注目すべきは、 「エネルギーミックスの確実な実現」です。

エネルギーミックスとは、2015年に決まった「2030年における発電方法の組み合わせ(エネルギーミックス)」を指し、さまざまな発電方法をバランスよく組み合わせることを目指しています。具体的には、以下のようなバランスを目指して中長期的な対策を実施している最中です。

上記の目標値達成のために、具体的に以下のような対策が求められます。これは一般家庭や企業を問わず、日本人に課せられた省エネ対策となります。

長期エネルギー需給見通し

出典:長期エネルギー需給見通し(経済産業省)を元に作成

再生可能エネルギー(電源構成比率 22〜24%)

再生エネルギーの導入を積極的に推進し、主力電力にする。そのためにコストを下げる研究を行い、電力系統の成約を克服する。太陽光発電をはじめとした自然環境によって発電量が変わる再生可能エネルギーは、火力発電などで調整できるように取り組む。

原子力発電(電源構成比率 20〜22%)

依存度をできる限り低減しながら、安全性を最優先で原子力規制委員会の基準をクリアしてから再稼働する。同時に使用済み燃料の対策も進める。

石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料(電源構成比率 56%)

CO2排出量を抜本的に削減する。企業による自主開発を促進し、同時に高効率火力発電の有効活用に取り組む。同時に災害リスクへの対応強化を図る。

省エネルギー(実質エネルギー効率35%減)

2018年6月に成立した「改正省エネ法」や支援策を一体として実施することで徹底した省エネを進める。

水素/蓄電/分散型エネルギーの推進

再生可能エネルギーとして水素の活用についても取り組みとして盛り込まれる。水素/蓄電/分散型エネルギーの推進については、2050に向けたステップとなる。

エネルギー基本計画と省エネ法について

省エネとは」のページで簡単に触れていますが、日本では「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)(昭和54年制定)により、昔から省エネ活動を行ってきました。

省エネ法では、工場や事業所、貨物・旅客・航空輸送事業者、荷主(貨物を貨物輸送事業者に輸送させる事業者)、機械器具などを製造・輸入している事業者、家電の小売事業者やエネルギー供給事業者などを規制の対象とし、省エネの取り組みを行う際の規範(判断基準)を示し、省エネ努力を促しています。また、一定規模以上のエネルギーを使用する事業者に対しては、エネルギーの使用状況などの報告を義務付けるなどの規制を課しています。

省エネ法は、エネルギー基本計画と密接に関わり、時代に合わせて改正を繰り返しています。直近では、東日本大震災での電力不足に対応するため、ピークカットやピークシフトなどの「電気の需要の平準化」の取り組みを促すといった法改正が実施されました。

省エネの現状と今後の対策

エネルギーミックス(長期エネルギー需給見通し)では、2013年度を基準年として、年1.7%の経済成長を前提としつつ2030年度のエネルギー需要を対策前と比べて原油換算で5,030万Kl程度削減するという見通しを示しています。この目標値を達成するには、エネルギー消費効率(最終エネルギー消費量/実質GDP)を35%程度改善する必要があります。これは非常に厳しい数値で、2016年度時点での削減量は876万kl、進捗率は17.4%にとどまっています。

エネルギーミックス(長期エネルギー需要見通しにおける省エネ対策)
エネルギーミックスにおける
最終エネルギー需要
エネルギーミックスにおける最終エネルギー需要
エネルギー消費効率の改善
エネルギー消費効率の改善
※1970年、1990年、2012年のエネルギー消費効率を100とする

出典:「省エネ法の概要と動向」平成30年9月18日 資源エネルギー庁 省エネルギー課

高い目標値をクリアするには、さらなる省エネ対策が求められます。その手段として「産業」「業務」「運輸」「家庭」の4部門では、以下のような対策が必要です。

エネルギーミックスの省エネ対策の進捗状況(2016年度時点)【部門別】全体 <省エネ見込み▲ 5,030万kl> ▲ 876万kl(進捗率:17.4%)

産業部門 <省エネ見込み ▲ 1,042万kl>▲ 191万kl(進捗率:18.3%)

主な対策
  • LED等の導入[44.6万kl/108.0万kl (41.3%) ]
  • 産業用ヒートポンプの導入[4.3万kl/87.9万kl (4.9%) ](課題①)
  • 産業用モータの導入[8.8万kl/166.0万kl (5.3%) ](課題②)

業務部門 <省エネ見込み ▲ 1,227万kl>▲ 206万kl(進捗率:16.8%)

主な対策
  • LED等の導入[88.0万kl/228.8万kl (38.5%) ]
  • 高効率な冷凍冷蔵庫やルーター・サーバー等の導入
    [32.8万kl/278.4万kl (11.8%) ](課題①)
  • 建築物の省エネ化[52.9万kl/373.4万kl (14.2%) ](課題⑤)

家庭部門 <省エネ見込み ▲ 1,160万kl>▲ 170万kl(進捗率:14.6%)

主な対策
  • LED等の導入[86.3万kl/201.1万kl (42.9%) ]
  • トップランナー制度等による機器の省エネ性能向上
    [13.0万kl/133.5万kl (9.7%) ](課題④)
  • 住宅の省エネ化[19.6万kl/356.7万kl (5.5%) ](課題⑤)

運輸部門 <省エネ見込み ▲ 1,607万kl>▲ 309万kl(進捗率:19.2%)

主な対策
  • 次世代自動車の普及[71.5万kl /938.9万kl(7.6%) ](課題③)
  • その他の運輸部門対策[237.5万kl/668.2万kl (35.5%) ]
    (内訳)
    貨物輸送[96.2万kl /337.6万kl(28.5%) ](課題②)
    旅客輸送[141.3万kl /330.5万kl(42.8%) ](課題②)

各部門の課題詳細

課題①

産業部門・業務部門:
省エネ設備投資の促進によるエネルギー消費効率の改善が課題

産業・業務・運輸部門:
連携省エネルギー計画の認定制度の創設等の措置を講じる。
[省エネ効果 165万kl]

課題②

運輸部門(貨物分野):
小口配送や再配達の増加への対処など貨物輸送の効率化が課題

運輸部門:
荷主の定義の見直しや準荷主の新設の措置を講じる。[省エネ効果 85万kl]

課題③

運輸部門(旅客分野):
EV・PHV/FCVの普及加速が課題

課題④

家庭部門・業務部門:
機器間連携などによる新たな省エネ技術の開発・普及が課題

課題⑤

家庭部門・業務部門:
住宅・ビルの徹底した省エネ性能向上が課題

出典:「省エネ法の概要と動向」平成30年9月18日 資源エネルギー庁 省エネルギー課

産業・業務部門における省エネの課題

製造業に関連した内容として、産業・業務部門に絞って説明します。現状、LEDなどの導入は進んでいますが、省エネ設備の導入が進んでいないことがわかります。そのため近年はエネルギー消費量も足踏み傾向で、事業者単独での省エネ対策に限界が近づいています。今後は、事業者単独ではなく、複数の事業者が連携して省エネに取り組むことが求められています。

事業者の原単位推移
産業部門のエネルギー消費原単位の推移(2015年度=100)
産業部門のエネルギー消費原単位の推移(2015年度=100)
業務部門のエネルギー消費原単位の推移(2015年度=100)
業務部門のエネルギー消費原単位の推移(2015年度=100)

出典:「省エネ法の概要と動向」平成30年9月18日 資源エネルギー庁 省エネルギー課

産業・業務部門における具体的な省エネ対策

従来の省エネ法は、事業者ごとのエネルギー消費量に基づいて評価していましたが、改正後の現行法では「連携省エネルギー計画」の認定を受けた企業は事業者全体での省エネを報告できるようになりました。これにより、以下のようなケースで省エネの最適化が可能です。

産業・業務部門における具体的な省エネ対策
出典:「省エネ法の概要と動向」平成30年9月18日 資源エネルギー庁 省エネルギー課

工場等判断基準を理解したうえで省エネに取り組む

省エネ法改正にともない経済産業省では、事業者が技術的かつ経済的に可能な範囲で省エネに取り組む目安となるべき判断基準が設けられていましたが、2018年さらに見直しが図られました。以下が基準部分見直しの内容になります。

最近の取組(基準部分の見直し)告示改正・2018年3月公布・4月施行

事業者の省エネ投資を促進するため、経営層の省エネ取組への関与をさらに促す観点から、経営層の役割を明確化するなど、事業者として遵守すべき事項を追加。

工場等判断基準・基準部分の見直し

事業者及び連鎖化事業者が工場等全体を俯瞰して取り組むべき事項として以下のア〜クまでの8項目を規定

ア.
管理体制を整備
イ.
責任者(エネルギー管理統括者)を配置
ウ.
取組方針(目標、設備の新設・更新)を規定
エ.
取組方針の遵守状況を確認・評価、改善指示
オ.
取組方針、遵守状況の評価手法を定期的に精査、変更
カ.
省エネに必要な資金、人材を確保
キ.
従業員に対して、取組方針を周知、省エネ教育を実施
ク.
エネルギー使用量、管理体制、取組方針等の管理
  • PDCAサイクルの順番に項目を整理。
  • 責任者、責任者を補佐する者、現場実務を管理する者の責務等を規定
Ⅰ−1 全ての事業者が取り組むべき事項:

事業者及び連鎖化事業者が工場等全体を俯瞰して取り組むべき事項として以下の(1)〜(8)までの8項目を規定

(1)
取組方針(目標、設備の運用・新設・更新)の策定
(2)
管理体制の整備
(3)
責任者等の配置等
責任者の責務
責任者を補佐する者の責務
現場実務を管理する者の責務
(4)
省エネに必要な資金・人材の確保
(5)
従業員に対する取組方針の周知、省エネ教育の実施
(6)
取組方針の遵守状況を確認・評価・改善指示
(7)
取組方針及び遵守状況の評価手法の定期的な精査・変更
(8)
取組方針や管理体制等の文書管理による状況把握

責任者の責務

取組方針の遵守状況や現場実務を管理する者からの報告等を踏まえ、次期の取組方針の案を取りまとめ、取締役会等の業務執行を決定する機関への報告を行うこと 等

責任者を補佐する者の責務

責任者と現場実務を管理する者の間の意思疎通の円滑化を図ること等により責任者の業務を補佐すること 等

現場実務を管理する者の責務

エネルギー管理を踏まえた工場等のエネルギーの使用の合理化の状況に係る分析結果について責任者に対する報告を行うこと 等

※ その他、「工場単位、設備単位での基本的実施事項」(例.既存の設備に関して、省エネの観点から更新・改造等の優先順位を整理すること)を規定。

出典:「省エネ法の概要と動向」平成30年9月18日 資源エネルギー庁 省エネルギー課

PDCAサイクルを回すことが重要

工場等判断基準を見ると、PDCAサイクルを回すことの重要性がわかります。設備の運転を計測・記録し、改善しながらエネルギー消費量を削減することが今後の課題となります。そこで重要なことが各設備でのエネルギー使用量を正確に知り、分析して対策を講じることです。電力やガスの消費量を記録、流量や圧力をセンサで計測・記録することはもちろん、IoTなどを駆使して事業者間で省エネ対策に取り組むことが2030年に向けて求められます。

そのために国は、評価制度や省エネ補助金などの整備を進め、事業者が省エネに取り組みやすい環境を作っています。省エネの基本的な流れや対策例、省エネ設備に関する補助金については、以下のページでも紹介しているので併せてご覧ください。

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