ISO14001・ISO50001とは?

製造業における省エネ対策関連の規格を説明します。こちらでは、環境対策や省エネ対策で遵守すべき、ISO14001「環境マネジメントシステム(Environmental Management System)」とISO50001「エネルギーマネジメントシステム(Energy management systems)」について紹介します。

ISOの基礎知識

ISOとは、非政府機関「International Organization for Standardization(国際標準化機構)」の略称で、ISOが制定した規格をISO規格といいます。ISO規格では、製品規格のほか、組織の品質活動や環境活動を管理する仕組みについても規定しています。これらを一般的に「マネジメントシステム規格」と呼んでいます、身近なところでは品質管理マネジメントシステム「ISO9001」が該当します。

その中でも環境側面全般を管理しているものがISO14001「環境マネジメントシステム(Environmental Management System)」、エネルギー効率に特化したマネジメントシステムがISO50001「エネルギーマネジメントシステム(Energy management systems)」です。この2つのマネジメント規格は、日本における省エネ法対策にも有効です。

ISO14001について

ISO14001「環境マネジメントシステム(Environmental Management System)」は、経済的な活動とバランスをとりながら環境保護に力を入れる組織をつくるための枠組みです。ISO14001を取得することで、環境保全に貢献している企業とみなされます。対象組織は、業種・業態を問わず、あらゆる組織が認証を取得可能です。ISO14001では、「環境パフォーマンスの向上」 「厳守義務を目指すこと」 「環境目標の達成」を実現するために環境マネジメントシステムの要求事項を定めています。

ISO14001の目的

ISO14001は、「(1)方針・計画(Plan)」「(2)実施(Do)」「(3)点検(Check)」「(4)是正・見直し(Act)」というPDCAサイクルを繰り返し、環境マネジメントのレベルを継続的に改善することが目的です。方針の策定などに最高経営層の責任ある関与を求め、トップダウン型の管理を想定していることも特徴です。

また、ISO14001は、経営面での管理手法を定めたものであり、具体的な環境対策の内容や水準を定めるものではなく、具体的な管理方法については事業者に委ねられています。難しいシステムを構築するのではく、あくまで組織ができるレベルで工夫して、PDCAサイクルを回していくことが目的です。

具体的なISO14001の構成は以下のようになります。

まえがき

序文

0.1 背景
0.2 環境マネジメントシステムの狙い
0.3 成功のために要因 
0.4 Plan・Do・Check・Actモデル
0.5 この規格の内容

1 適用範囲

2 引用規格

3 用語及び定義

3.1 組織及びリーダーシップに関する用語
3.2 計画に関する用語
3.3 支援及び運用に関する用語
3.4 パフォーマンス評価及び改善に関する用語

4 組織状況

4.1 組織及びその状況の理解
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
4.3 環境マネジメントシステムの適用範囲の決定
4.4 環境マネジメントシステム

5 リーダーシップ

5.1 リーダーシップ及びコミットメント
5.2 環境方針
5.3 組織の役割、責任及び権限

6 計画

6.1 リスク及び機会への取組み
6.1.1 一般
6.1.2 環境側面
6.1.3 遵守義務
6.1.4 取組みの計画策定
6.2 環境目標及びそれを達成するために計画策定
6.2.1 環境目標
6.2.2 環境目標を達成するために取組みの計画策定

7 支援

7.1 資源
7.2 力量
7.3 認識
7.4 コミュニケーション
7.4.1 一般
7.4.2 内部コミュニケーション
7.4.3 外部コミュニケーション
7.5 文章化した情報
7.5.1 一般
7.5.2 作成及び更新
7.5.3 文章化した情報の管理

8 運用

8.1 運用の計画及び管理
8.2 緊急事態への準備及び対応

9 パフォーマンス評価

9.1 監視、測定、分析及び評価
9.1.1 一般
9.1.2 遵守評価
9.2 内部監査
9.2.1 一般
9.2.2 内部監査プログラム
9.3 マネジメントレビュー

10 改善

10.1 一般
10.2 不適合及び是正処置
10.3 継続的改善

附属書A(参考)

この国際規格の利用の手引き

附属書B(参考)

ISO 14001:2015とISO 14001:2004との対応

ISO14001の構成の中からPDCAサイクルに関連する項目を補足説明します。

PDCAサイクル
【PLAN】
4.組織状況

環境マネジメントシステムに関わる組織の状況を整理します。騒音・排ガス・CO2の排出など、組織が周辺環境に与えている影響を明確にします。課題が明確になったら影響を受ける地域住民など、利害関係者が求めていることを調査します。その後、環境マネジメントシステムを構築する範囲を決定します。

5.リーダーシップ

ISO14001は、トップダウン型の管理を想定しており、トップマネジメント(経営層)に説明責任が発生します。経営層は、「環境方針」を表明し、組織を整え、各部門の責任や権限を決定します。

6.計画

計画に入る前に、組織が予期しない状況に陥るリスクあるいは機会を想定します。予期しない状況に陥った場合にどのように対処するか予め計画しておきます。その後に組織活動や生産などで排出される好ましくないものを環境側面として認識します。有害・有益を問わず、周辺地域に変化を与える可能性がある環境側面を「環境影響」として認識・管理します。その後に環境調査を実施し、起こりうる環境事故の重要度を評価し、管理方法を決定します。

【Do】
運用

部署・担当で運用できるように計画や手順を整備し、運用を開始します。また、緊急事態が発生した場合の対策についても予め定めておきます。

【Check】
9.パフォーマンス評価

運用を開始したら指標を決めて、パフォーマンスを評価します。その結果は、経営層に報告し、改善棟の支持を仰ぎます。計画の修正があれば、プロセスを見直します。

【Action】
10.改善

不適合が発生した場合に備えて、処置法と是正処置について決めておきます。常に改善を怠らず、社会や組織の変化に柔軟に対応し、アップデートを繰り返しながら環境マネジメントシステムを最適化します。

ISO50001について

ISO50001「エネルギーマネジメントシステム(Enerergy manegement system:EnMS)」は、企業等で使用するエネルギーを管理し、継続的改善を図ることを目的とした国際規格です。組織のエネルギーパフォーマンスを可視化し、エネルギー効率のパフォーマンスアップを目的とし、エネルギーコストの削減、温室効果ガスの排出量削減へとつなげます。ISO14001と同様に「(1)方針・計画(Plan)」「(2)実施(Do)」「(3)点検(Check)」「(4)是正・見直し(Act)」というPDCAサイクルを繰り返し、評価・改善を行うことが基本になります。

ISO50001の目的

ISO50001の目的は、「エネルギーパフォーマンスの改善を通じた省エネルギーをあらゆる組織で実現」「可視化によるエネルギーパフォーマンスの改善」の2点です。エネルギーパフォーマンス(エネルギー原単位等)の改善を計画的かつ効果的に行うために、PDCA(計画・実施・確認・改善措置)サイクルによる運用が採用されています。導入のポイントは、エネルギーパフォーマンスの評価と改善を行う「エネルギーレビュー」と、トップマネジメントによる内部監査にあたる「活動の適合性の確認と評価」の2点です。以下では、具体的な導入活用のポイントとして「エネルギーレビュー」と「活動の適合性の確認と評価」を解説します。

エネルギーレビュー

ISO50001では、エネルギーパフォーマンスとEnMS(エネルギーマネージメントシステム)の継続的改善と達成を要求しています。そこで重要なのが、エネルギーパフォーマンスの評価と改善を行うエネルギーレビューのプロセスです。エネルギーレビューとは、データや情報に基づいてエネルギーパフォーマンスを決定し、改善の機会を特定することです。エネルギーレビューのプロセスは、原単価の管理分析・評価・改善が該当し、事業者がエネルギーパフォーマンス改善の手順・方法論として活用できます。具体的には、以下のような要求事項が規定されています。

エネルギー使用のプロセスごとの測定分析
現時点のエネルギー源を特定する
過去および現在のエネルギーの使用・使用量を評価する

エネルギーの使用および使用量を測定・その他のデータに基づいて分析します。具体的には、組織のエネルギー使用量を測定し、エネルギー源を特定し、過去から現在までにエネルギー使用量を評価します。例えば、「増加傾向なのか、減少傾向なのか」「全体に占めるエネルギー源ごとの割合はどうなのか」「使用量の変動原因な何なのか」などを分析します。さらに設備・設備群・作業工程単位でエネルギー管理を徹底し、それぞれ年・季節・月・週・時間単位など、きめ細かなエネルギー管理を行い、過去実績と比較しながら消費動向を把握できるように検討します。

エネルギー使用に影響を及ぼすプロセスと変数の特定
エネルギーの使用および使用量に著しく影響を及ぼす、施設・設備・システム・プロセス・組織で働くまたは組織のために働く要員を特定する
著しいエネルギーの使用に影響をおよぼす、その他の関連変数を特定する

エネルギーの使用および使用量の分析に基づき、エネルギーパフォーマンスに影響を与えている「著しい領域」を特定します。工場の場合、影響を及ぼす変数として原料・生産量・要求品質・周囲環境などの操業状況が考えられます。まずは無駄のない設備の運転のために運転基準の確立や教育訓練の実施から検討します。

エネルギーパフォーマンスの決定
特定された著しいエネルギーの使用に関係する施設・設備・システム・プロセスの現在のエネルギーパフォーマンスを決定する

「著しい領域」に特定された施設・設備・システム・プロセスなどに対して、エネルギー効率・エネルギー消費量・関連変数を配慮して原単価などを定め、エネルギーパフォーマンス指標(EnPI)に基づいてエネルギーパフォーマンスを算出します。

将来のエネルギー使用および使用量の予測
将来のエネルギーの使用および使用量を予測する(将来のエネルギーパフォーマンスを推計する)

「生産量が大きく減少するのでエネルギー使用量も減少し、エネルギーパフォーマンスの改善余地も少なくなる」「需要拡大が見込まれているのでエネルギー消費量が増大し、エネルギーパフォーマンスの改善余地が増える」など、将来の製品計画・生産計画・需要動向などからエネルギー使用状況を推測します。

エネルギーパフォーマンス改善の機会の特定
エネルギーパフォーマンスを改善するための機会を特定し、優先度を決め、記録する

エネルギーパフォーマンスの測定と観察によるエネルギー診断から改善の機会を特定します。エネルギー診断は、社内の人材で難しい場合は外部に委託しても大丈夫です。改善方法や省エネ量、実施コストなどを考慮し、優先順位をつけます。

活動の適合性の確認と評価

エネルギーパフォーマンスやEnMSの継続的改善を図るためには、トップマネジメントによる内部監査が重要です。具体的には、エネルギーの使用の実態を把握し、取組方針の順守状況を確認・評価・改善がトップマネジメントに求められています。製造業では、工場の総合的なエネルギー管理における内部点検と言えます。内部点検要件では、点検範囲、点検プログラム、点検基準、点検チームの選定が重要です。監査活動は、監査の開始→文書レビューの実施→現地監査活動の準備→同実施→監査報告書の作成、承認および配付→監査の完了→監査のフォローアップの実施で進めます。詳しくは以下の表をご覧ください。

内部監査活動プロセスの要件
内部監査プロセス 活動内容 留意点
(1) 内部監査の開始 監査の目的、監査の範囲、監査の基準、監査チームの選定 ・内部監査規定の活用
・監査を受ける部門や製品セクターと利害関係の無い人
(2) 文書レビューの実施 現地監査に先行 ・エネルギーマネジメントシステム文書を中心にレビュー
(3) 現地監査活動の準備 監査計画の作成、作業文書(チェックリスト)の作成 ・重点を置くべき監査箇所の選定
・監査項目やポイントを整理
(4) 現地監査活動の実施 情報の収集および検証、監査基準に基づく評価、監査所見の作成、監査結論の作成 ・全数検査に代わる抜き取り的な検査
・本質的な証拠を見つけて評価
・コンサル行為も可
・アドバイスに基づき改善
(5) 監査報告書の作成、承認および配付 - -
(6) 監査の完了 - -
(7) 監査のフォロアップの実施 是正処置の完了と有効性の検証 ・対応策の検討
・期間を決めた改善

参考:経済産業省 資源エネルギー庁
「ISO5001(エネルギーマネジメントシステム)(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/iso50001/point.html)」を参考に作成

ISO14001とISO50001の違いについて

ISO140001とISO50001は、マネジメントシステムのフレームワークが共通しています。相違点は、計画における「エネルギーレビュー」「エネルギーベースライン」「エネルギーパフォーマンス指標」と、実施及び運用の中の「設計」「エネルギーサービス、製品、設備およびエネルギーの調達」の部分です。

基本的なフレームワークは共通しているので、すでにISO14001を取得している場合は、環境評価手順に「エネルギーレビュー」「エネルギーベースライン」「エネルギーパフォーマンス指標」 「設計」「エネルギーサービス、製品、設備およびエネルギーの調達」の要素を追加することで、環境マネジメントシステムを活かしてエネルギーマネジメントシステムが構築できます。ISO14001とISO50001は親和性が高く、省エネ対策として有効です。

ISO14001(EMS) とISO50001(EnMS) の違い

ISO14001 における環境影響側面はエネルギー消費も含む、下記の様々な要素が含まれているが、ISO50001 はエネルギーに特化している。

ISO14001(EMS) とISO50001(EnMS) の違い

※システムのフレームワークは共通(ともに、ISO Guide72 に準拠して開発)
※大きな相違点は、計画の「エネルギーレビュー、ベースライン、パフォーマンスインディケータ」、実施と運用の「設計及びエネルギーサービス、機器及びエネルギーの調達」部分
※出典:iso50001.jp「ISO14001 とISO50001 の違い」を元に作成

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