省エネ施策の考え方
「何を基準に省エネすべきか」「エネルギー消費量を抑える方法」「エネルギー使用の効率化を図る手段」など、具体的な省エネ施策の考え方について説明します。省エネといっても多種多様な方法があり、「消費電力を抑えたいのか」「設備の効率化を図りたいのか」「CO2排出量を削減したいのか」によってとるべき行動は異なります。
原単位について
原単位(Intensity)とは、一定量の生産物をつくるために使用する、または排出するものや時間などの量のことです。省エネでは、各種エネルギーの生産効率(どれだけ効率よく生産が行われたか)を示す値として「エネルギー原単位」が用いられます。またエネルギー原単位は、以下のように定義されています。
一般的な原単位の定義
- A
- エネルギー原単位
- B
- エネルギー使用量
- C
- エネルギー量と密接な関係を持つ値
上述の原単位では、分子の“エネルギー使用量”が電気[ kWh ]・ガス[m3N]・重油[l]・熱量[GJ]・原油換算料[kl]・金額など、分母の“エネルギー量と密接な関係を持つ値”が重量[t]・面積[m2]・体積[m3]・個数・売上金額・付加価値額のように変動します。しかし、日本の省エネ法では、以下のように定められています。
省エネ法における原単位の定義
- A
- エネルギー原単位
- B
- エネルギー使用量(原油換算エネルギー使用量)
- C
- エネルギー量と密接な関係を持つ値(事業者が事業場ごとに定める)
電気需要平準化評価原単位
省エネ法では、法改正により「エネルギー消費原単位」に加え、新しい原単位「電気需要平準化評価原単位」を算出・管理し、どちらか一方で年平均1%以上削減することを義務付けています。どちらも原単位ですが、独立した指標なので組み合わせて見るものではないと理解することが大切です。
- 電気需要平準化時間帯とは
-
電気需要平準化時間帯とは、電気の需要の状況に照らし併せて需要の平準化を推進する必要性があると認められた時間のことです。具体的には、全国一律で7~9月(夏期)および12~3月(冬期)の8~22時(土日祝含む)を電気需要平準化時間帯としています。これは夏期・冬期ともに電力使用率が1日の平均を上回る時間帯となり、とくに省エネに力を入れる必要がある時間帯です。
電気需要平準化評価原単位の算出方法
電気需要平準化評価原単位の算出方法は、電気平準化時間帯の電気使用量を1.3倍として計算します。これは、電気平準化に資する措置を実施した場合に不利な評価を受けないためです。
原単位の変動要因
エネルギー原単位は、以下のような要因で変動します。
- ①
- 内部要因(製造に関わる要因):生産量、品種構成、歩留まり、生産性、在庫、設備・工程変更等
- ②
- 外部要因:空調、クリーンルーム、冷凍機、チラー等の外気気温および湿度等
- ③
- 原単位自身の要因:生産量時期とエネルギー使用時期のギャップ、計測時間のズレ、分母の設定不適合等
エネルギーの節約・代替
省エネ施策では、エネルギー使用量を根本的に減らすためにエネルギーの節約や代替を検討します。エネルギーの節約は、こまめに電源を切るといった基本的な節電、省電力な設備を導入するといった投資などが該当します。エネルギーの代替は、化石燃料を使用しない新エネルギーへの変更などを指します。
デマンドシフト(ピークシフトとピークカット)
原単位の項目でも説明しましたが、省エネ法の改正で「電気需要平準化時間帯」が追加されました。この電気需要平準化時間帯の対策として有効なのが「ピークシフト」と「ピークカット」です。電気料金単価は、エネルギー使用量が多くなる時間帯(ピーク時)ほど高く、エネルギー使用量の少ない時間帯ほど安く設定されています。さらにピーク時に電力を使うほど、電気料金単価は高くなっていきます。製造業では多くの電力を使うので、省エネ法の対応はもちろんですが、ピーク時の電力使用を控えて、深夜などの安い電力を使うことで大幅なコストカットにもつながります。
電気需要平準化の基本的なテクニック
電気需要平準化の方法として、「ピークシフト」「ピークカット」「ボトムアップ」の3つを説明します。実際には、HEMS(ホームエネルギーマネージメントシステム)やBEMS(ビルエネルギーマネージメントシステム)、FEMS(工場エネルギーマネージメントシステム)などを導入し、ピークカットやピークシフトなどの省エネ施策を行います。
- ピークシフト
-
エネルギー消費が多い時間帯や曜日を避け、ピークをほかの時間帯や曜日に移す(シフトする)ことです。具体的には、工場の操業日や時間を計画的に変更したり、夜間など電気需要の少ない時間に電気を貯めて昼間に使うなどが考えられます。
- ピークカット
-
エネルギー消費が多い時間帯に需要を減らす(カットする)ことです。具体的には、こまめに設備の電源をオフにする、冷房の設定温度を上げる、照明の数を減らす、稼働している設備の数を減らすなどが考えられます。
- ボトムアップ
-
エネルギー需要の少ない時間帯にエネルギーを使う(貯める)ことです。深夜などエネルギー需要の少ない時間帯の消費量を増やし、消費量を全体的に平準化することが狙いです。
コージェネレーション(エネルギーの再利用)
コージェネレーションとは、ガスタービンやガスエンジン、ディーゼルエンジンや燃料電池で発電を行い、その排熱を利用して蒸気や温水を利用する技術です。日本語では、電力と熱を得ることから「熱電併給」とも呼ばれます。コージェネレーション・システムは、熱を再利用することから工場内での自家発電などに用いられることが多くなっています。
コージェネレーションのメリット
- コスト削減に有効
-
従来の発電所で捨てられていた熱を利用するのでエネルギー効率が高く、ランニングコスト削減に効果的です。
- CO2排出量を削減
-
発電した電気と熱を効率的に利用するので、発電量が抑えられ、CO2排出量の大幅削減に有効です。
- 電力の安定確保
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電力会社から送電される電気と、コージェネレーション・システムによる発電のように、2系統の電力を確保することでエネルギー源が分散でき、停電や故障といった万が一のときにでも電力を確保しやすくなります。
- 電気需要平準化を促進
-
省エネ法では、電気需要平準化が盛り込まれていますが、コージェネレーション・システムを用いて発電を行えば、電力会社から購入する電気を削減でき、電気需要平準化の促進にも効果的です。
- A
- ガス
- B
- 発電
- C
- 照明・動力
- D
- 蒸気利用
- E
- 排熱利用(吸収冷凍機)
- F
- 冷房
- G
- 暖房
- H
- 温水利用