シャント抵抗の選定方法

シャント抵抗は回路全体の抵抗になるため、なるべく小さな値の抵抗器を選ぶことになります。しかし、実際には計測する電流の大きさやオペレーションアンプの増幅率・配線などを考慮する必要があり、正しいシャント抵抗器の選定には多くの要素が存在します。
ここでは、シャント抵抗器の用途や電流検出の原理などの基礎知識を紹介、さらに、選定のポイントとなる抵抗値と定格・配線位置などについて説明します。

シャント抵抗器とは

シャント抵抗器は特別な形状や値を持った抵抗器ではなく、電流の検出を目的として電気回路に組み込む抵抗器のことです。この抵抗器の電流を検出回路に直列に挿入し、抵抗両端の電位差を電流値に換算して電流を計測します。シャント抵抗器は基板上の回路や、デジタルマルチメーター(DMM)などにも組み込まれており、抵抗値は計測する電流値やオペレーションアンプ(オペアンプ・OP)の増幅値によって選定し、一般には数ミリΩ~数百Ωのものがよく使われます。

シャント抵抗器の用途

シャント抵抗器は、電子機器の省エネルギー化や性能・安全性の向上などを目的とした、さまざまな制御を行うために、電気回路の中で電流を検出します。たとえば、電池の過充電試験や過放電試験などでは通電電流を計測するために回路中にシャント抵抗器を入れ、シャント間の電圧を計測します。シャント抵抗は、さまざまな分野で利用されていますが、そのなかから代表的な用途を以下に紹介します。

コンバータ回路やインバータ回路の電流制御

DC-DCコンバータ回路の出力電流の、のこぎり波形のピーク電流計測や、三相モーターのインバータ回路で時間や位相を制御するときに必要な電流を計測します。

過電流による部品破損の防止

雷や短絡などによって電気回路に異常に大きい電流が流れたときの、電源回路やモーター・二次電池など他の部品の保護を目的として電流を検出します。

バッテリーの放電・充電管理

自己放電による蓄電量の減少や充電時の過熱などが起こらないよう、バッテリーや充電回路に流れる電流を検出し、回路が正常に動作するように管理します。

シャント抵抗器による電流検出原理

シャント抵抗器による電流検出では、シャント抵抗器による電圧降下を計測します。たとえば、シャント抵抗器として最もよく使用される250Ωの抵抗を直列に接続した場合、電流が流れることで250Ωの抵抗の両端に電圧降下による電位差が発生します。たとえば、この電位差が2Vであった場合、2V÷250Ωとなり電流値は8mAとなります。

A:外部抵抗 B:シャント抵抗器 C:電流検出器

ローサイド電流検出とハイサイド電流検出

回路の形態には、ローサイド検出とハイサイド検出があります。
ローサイド検出では、負荷のグランド側にシャント抵抗器を配置し、グランドとの間に生じる電圧を検出します。ローサイド電流計測は、コモンモード電圧がほとんどかからないため回路の設計が容易です。また、電圧がグランドに近いため、高電圧がかかる回路や電源電圧にサージなどが発生しやすい回路の電流計測に適しています。一方で、システムグランド-負荷グランド間で差分が発生するため、グランドした負荷には使用できません。

ローサイド検出
A:電源 B:外部抵抗 C:シャント抵抗器 D:オペレーションアンプ(オペアンプ・OP)

ハイサイド検出では、負荷の電源側にシャント抵抗を挿入します。負荷をグランドしていても電流を検出することができます。また、検出回路を電源の近くに配置できるため、制御回路への接続もローサイド検出に比べて容易です。一方で、コモンモード電圧に対処する必要があり、回路が複雑になります。また、オペレーションアンプ(オペアンプ・OP)の電源電圧を高くする必要があります。
このように、ローサイド検出とハイサイド検出には長所と短所があるため、計測の目的に応じた回路の形態を選択してください。

ハイサイド検出
A:電源 B:外部抵抗 C:シャント抵抗器 D:オペレーションアンプ(オペアンプ・OP)

抵抗値と定格の選定

4-20mAを電圧に変換するときの抵抗値は、一般的に250Ωが使用されます。1-5Vに変換されるので扱いやすいためです。消費電力は最大で0.1W(=5V×20mA)ですから定格は1/4W以上を使用します。許容差は要求される変換精度にもよりますが、通常は±0.1%を選定します。

抵抗値と定格の選定

250Ωの抵抗について

250Ωの抵抗は、抵抗の標準数に該当しないため汎用的な抵抗では入手できませんが、合成抵抗で作ることができます。例えば、1kΩの抵抗4本を並列に接続するか、120Ωと130Ωの抵抗を直列に接続することで250Ωにすることができます。

250Ωの抵抗について

ワンポイントQ&A

  • Q:抵抗値は必ず250Ωを使う必要がありますか?
  • A:出力機器の最大負荷抵抗以下であれば250Ωである必要はありません。例えば100Ωを使用すれば4-20mAの電流出力が、0.4-2Vの電圧に変換されますので0.4-2Vをスケーリングすれば実測値に変換できます。

シャント抵抗の配線位置

シャント抵抗は電圧入力機器側に配線します。機器間を電流信号で伝送するためです。電流信号(4-20mA)で伝送したほうが特長(長距離可能・ノイズに強い)を生かすことができます。(4-20mA出力機器側にシャント抵抗を配線すると電圧伝送になってしまいます。)なお、機器間の配線ケーブルはツイストペアケーブルを使用します。

シャント抵抗の配線位置

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