自動車におけるCANの使用例

ダイアグ通信による故障診断、CCP/XCPによる測定/キャリブレーションなど、CAN通信の使用例について紹介しています。

拡大する使用範囲

自動車での使用を前提に開発されたシリアル通信プロトコル「CAN」の基本的な用途は、ECU(Electronic Control Unit)間での通信です。CANデータ通信の仕組みで、どのようにデータをやり取りしているのかについてはご説明しましたが、こちらでは実際に活用されているシーンについて自動車を題材にお伝えします。

故障診断や測定/キャリブレーションに使用範囲は拡大

ダイアグ通信による故障診断

現在の自動車は、CAN通信を介した車載ネットワークを利用し、車両全体のECU間通信を行っています。そのデータを利用して、故障診断を行う方法が「ダイアグ通信」です。そのほかにも「診断通信」「診断データ通信」「故障診断通信」と呼び方はさまざまですが、こちらではダイアグ通信で統一してお話しします。

ダイアグ通信の基本的な原理は、車両の専用コネクタに診断テスターを接続し、診断テスターからECUへリクエストメッセージを送信します。それに対してECUは、実行した結果として「ポジティブレスポンスメッセージ」を送信します。また実行できない場合は、その理由を「ネガティブレスポンスメッセージ」として送信します。これを診断テスターで受信することで故障個所などを知ることができます。

リクエストメッセージとレスポンスメッセージ
リクエストメッセージとレスポンスメッセージ

診断コネクタの規格について

近年の自動車ではCANが当たり前になり、診断コネクタについても標準化されています。「故障診断コネクタ」「OBDコネクタ」「OBD-IIコネクタ」「DLCコネクタ」のように呼び方はさまざまですが、そのほとんどがISO15031-3/SAE J1962で規定された台形のコネクタを採用しています。また、車両装着位置についても運転席の足元でほぼ統一されています。

診断コネクタの規格について
診断コネクタの規格について

通常は以下のようなピン配列となっており、ダイアグ通信によって車両情報を検出することが可能です。

診断コネクタの規格について

キャリブレーションプロトコル「CCP」「XCP」

自動車に限らず、生産機械などの制御には欠かせない工程「キャリブレーション」。現在の電子化された自動車では、各種センサの数値からパラメータを変更し、制御全体を最適化する必要があります。その際にECUへアクセスするためのプロトコルを「測定/キャリブレーションプロトコル」と呼んでいます。そして、最初に誕生したのがCANを使った測定/キャリブレーションプロトコル「CCP(CAN Calibration Protocol)」です。

キャリブレーションプロトコル「CCP」「XCP」

現在の自動車は、高度な制御のために測定/キャリブレーションの重要度が増し、さらにCAN以外のシリアル通信プロトコルが自動車に搭載されるようになりました。そうした状況に対応するため、異なるネットワークにも対応できる測定/キャリブレーションプロトコルとして「XCP」が登場。CCPやXCPについては、「ASAM(Association for Standardisation of Automation and Measuring Systems)」という団体が規格化しています。

XCPのメリット

XCPは、異なるネットワークでも同一のプロトコルが使用でき、すべての車載ECUの測定/キャリブレーションが可能です。また、CCPをベースにしており、ASAMのWebサイトでプロトコルが公開されているので自由に使えることもメリットでしょう。さらに測定/キャリブレーションの工程と制御を同期できることも特長のひとつです。

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