ひずみ計測時の基本

ひずみゲージとは、その伸び縮みにより抵抗が変化する事を応用してひずみ量を測定するものです。では、その抵抗の変化をどのように取り出すのでしょうか、ひずみ測定についてもう少し掘り下げたいと思います。

ひずみ計測に必須、ブリッジ回路

微小な抵抗の変化を大きな電圧変化として取り出す回路がホイートストンブリッジ回路です。
(ひずみ測定では略して単に"ブリッジ"といわれます。)

ひずみ計測に必須、ブリッジ回路

ブリッジ回路は<図1>のように抵抗が4つ、四角形につながっています。
回路の下側からE(V)の電圧をかけると、この4つの抵抗の抵抗値がまったく同じであればA点とB点の電圧が等しく、出力電圧EoはAとBの差、つまりゼロになります。

ひずみ計測に必須、ブリッジ回路

では、<図2>のように、抵抗の1つをひずみゲージに交換してみましょう。
ひずみゲージの抵抗と他の3つの抵抗の抵抗値が同じであれば、<図1>と同じなので出力電圧Eoは0Vです。ひずみゲージにひずみを加えて抵抗値に⊿Rの変化が発生するとバランスが崩れA点とB点の電圧に差が生じます。この電圧差を測定してひずみを求めます。

まとめ

出力電力Eoとひずみεの関係は以下のように表されます。
Eo=(1/4)×(⊿R/R)×E...(7式)
⊿R/R=比例定数(ゲージ率)K×ε(6式)
より、
Eo=1/4×K×ε×E...(8式)
これで、ひずみ量が電圧に換算できます。

出力電圧とひずみ量の関係

上記の例でご説明しましょう。
ゲージ率Kは一般的に2付近なので2.00とし、印加電圧を2.00Vとすると、
ひずみεと出力電圧Eoは(8式)より
Eo=1/4×2.00×ε×2.00V
Eo=ε

従って1000μSTのひずみ量は、計測器の読み取り値(=電圧値)では1000μV(1mV)になります。

ひずみゲージの貼り付け

ここからは実践編です。実際にひずみゲージを貼って測定してみましょう。適当な金属板とひずみゲージをご用意してお読み下さい。計測器は、キーエンスの動ひずみ計測器NR-ST04を例にご説明します。

前処理

前処理

ひずみゲージの貼り付け場所にサビや塗装があると、それらがひずみゲージと金属板の間で滑るため正確に測定できないため、貼り付けに適した表面を作ります。

  1. グラインダ、ブラストなどで金属素地面を露出させる
  2. 面を平滑にするために、ひずみゲージより少し広い範囲を、
    サンドペーパー(#200~300程度)で磨く
  3. 清浄な布等にアセトンを染みこませ、汚れがつかなくなるまで
    研磨面を脱脂、清浄する

接着位置決め

接着位置決め

ゲージ接着位置を、中心と方向がわかるように、十字に正確に4H程度のエンピツでけがきます。

ゲージの接着

ゲージの接着

ひずみゲージの裏面に接着剤を適量滴下し、けがき線にあわせてひずみゲージを貼付けます。接着剤は、ひずみゲージメーカが用意している専用のものを用います。
ポリエチレンシートをあてがって、上から指で1分程度押さえます。
接着剤が完全に硬化するまで放置してから測定します。

ひずみゲージどちらが裏?

表側にはリード線が半田付けされています。パターンもはっきり見えます。

表側にはリード線が半田付けされています。パターンもはっきり見えます。

裏側はフィルムの平らな面です。パターンが透けて見えます。

裏側はフィルムの平らな面です。パターンが透けて見えます。

計測器への配線と設定

リード線の固定

リード線の固定

計測中にリード線が動くと測定誤差の要因になるので、ひずみゲージのリード線を、ゲージ本体にストレスがかからないようにテープ、ケーブルタイなどで固定します。

計測器への配線

計測器への配線

計測器は、キーエンスの動ひずみ計測器NR-ST04を例にご説明します。CH1のA/・、C/・端子に、ひずみゲージから出ているリード線2本をそれぞれ配線します。プラス、マイナスの極性はありません。計測器前面のDIPスイッチの1がOFF、2~5がONであることを確認してください。

計測設定

キーエンスの動ひずみ計測器NR-ST04は、計測器本体はもちろん、PCにUSBで接続した状態でも計測が可能です。計測に必要な設定は、PC接続の場合と本体で直接計測する場合の2通りをご説明します。

PC接続で計測を行う場合の設定例

  • 収集設定をクリックします
    収集設定をクリックします
  • 入力レンジ「±2000μST」を選択し、「次へ」をクリックします。
    入力レンジ「±2000μST」を選択し、「次へ」をクリックします
  • サンプリング周期を「1ms」にし、「終了」をクリックします
  • 計測開始前に、接着時に生じるひずみゲージの微小なゆがみを補正するため、オートバランスボタンをクリックします。
    計測開始前に、接着時に生じるひずみゲージの微小なゆがみを補正するため、オートバランスボタンをクリックします。
  • 収集開始をクリックします。
    収集開始をクリックします。

本体で直接計測する場合の設定例

  • メニューキーを押し、「収集と表示」画面を表示させてから「収集設定」を選択します。「ユニットと各チャンネルの設定」を選択し、ユニット「ST04」の入力チャンネルの設定をします。F1キーを押して収集設定まで戻ります。
    メニューキーを押し、「収集と表示」画面を表示させてから「収集設定」を選択します。「ユニットと各チャンネルの設定」を選択し、ユニット「ST04」の入力チャンネルの設定をします。F1キーを押して収集設定まで戻ります。
  • 収集条件設定を選択し、サンプリング周期を 「1ms」に設定します。MENUキーを押し、次にF1キーを押して設定を確定させます。
  • 「初期調整」から「オートバランス」を選択しオートバランスを設定し、MENUキーを押して実行します。
    「初期調整」から「オートバランス」を選択しオートバランスを設定し、MENUキーを押して実行します。
  • START/STOPキーを押します。
    START/STOPキーを押します。

ひずみゲージにひずみを加えたら波形は変化しましたでしょうか?

計測器ラボ トップへ戻る