元素分析
拡大観察から元素分析まで、1台でリアルタイムに実行。全体撮影・詳細撮影・分析結果までをワンストップでレポート化でき、対象物サイズに制限が無いため、非破壊でそのまま分析が可能です。また、大気中で分析するため、導電性処理も真空引きも不要。誰でも簡単に元素分析が可能となりました。
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生産終了品
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EA-300 シリーズ
ついにマイクロスコープで元素分析が可能に。VHXシリーズに元素分析ヘッドが登場。ステージの上に置くだけで、対象物の破壊や蒸着、真空引きも不要。超高速LIBS解析を実現します。また、元素分析後の物質特定を、誰もが適切に判断できるAI-サジェストを搭載。数千種類の元素パターンを内部データベースに保有。取得したデータから、それが何かまで示唆します。また、自社で過去に解析した元素パターンも蓄積可能なため、類似パターンも示唆します。誰でも簡単に、専門知識不要で材質を瞬時に特定。分析後の判断に工数がかかりません。
元素分析(EA:Elemental Analysis)とは、対象物を構成する成分元素を検出し、各元素の含有量を調べることです。元素分析は、医薬・バイオなどの分野で有機化合物を分析する「有機分析」と、工業材料などの元素や無機物質(炭素を含有しない物質や簡単な炭素化合物)の組成や不純物の分析、医薬品や生体試料の微量分析などを行う「無機分析」に大別されます。
有機分析
有機分析の対象となる有機化合物が混合物である場合、精製によって分析を行います。たとえば、溶媒への溶解度を調べたり、蒸留などで目的の成分を単離し、融点・沸点・スペクトルなどの物理的性質を測定して純度を調べたりします。このようにして構成元素の定性分析・定量分析・分子量の測定で分子式を求めたり、原子団(基)などの定性分析・定量分析によって示性式を求めたりします。こうした有機分析は、医薬・バイオ・エレクトロニクスなどの分野における先端材料の機能発現などに役立っています。
無機分析
無機分析は無機化学で扱われるすべての物質がその対象となるため、元素の種類や数は有機物質よりも膨大です。そのため、多種多様な材料や部材を扱う工業分野で幅広く用いられています。無機物質に含まれる原子種・原子団・分子種・同位体など成分の種類を求める分析法を「無機定性分析」といいます。この操作が「定性」または「検出」です。また、成分を含む量を求める分析法を「無機定量分析」といい、その操作が「定量」です。用途としては、工業材料の化学分析による定量分析や固体試料の直接分析、医薬品や生体試料中の微量分析のほか、半導体などのエレクトロニクス分野や2次電池などの分野では、イオン成分の分析などが挙げられます。
元素分析(無機分析)の種類
無機分析の代表的な手法や分析装置の原理などを紹介します。
- ICP質量分析法(ICP-MS:Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)
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誘導結合プラズマ質量分析とも呼ばれ、アルゴンのプラズマを使ってイオン化する質量分析法です。この方法では、ほとんどの元素を90%以上イオン化可能です。まず、試料溶液をエアロゾル(霧状)にし、プラズマに導入します。試料溶液中の元素は脱溶媒・気化・原子化の工程後イオン化され、サンプリングインターフェースを通って高真空の質量分析部中に引き込まれます。それをイオンレンズで集束し、質量分析計で分離して検出器で測定します。
- ICP発光分光分析法 (ICP-AES:Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy)
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高周波の誘導結合プラズマ(ICP)を光源とする発光分光分析法のことです。試料溶液をエアロゾルにし、高温アルゴンプラズマ中に導入して測定します。元素が基底状態に戻る際に放出する光を分光し、その波長から元素の定性を、強度から定量を行います。測定可能な元素の種類が多く、薄膜の金属元素を特定する組成分析にも用いられます。分析装置には、1つの元素を高い分解能で測定する「シーケンシャル型」や、複数のCCDで複数の元素を同時測定できる「マルチチャンネル型」があります。
- 原子吸光分析法(AAS:Atomic Absorption Spectrometry)
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溶液化黒鉛炉またはフレーム内での噴霧で測定試料を加熱し、元素を原子化(原子蒸気化)します。そこに測定したい元素に合った波長の光を透過させると、基底状態の原子がその光を吸収して励起します。このときの測定元素の吸光度(光の吸収度)を基に元素濃度を測定します。なお、希酸水溶液を測定試料とするため、固体試料には適切な前処理が必要となります。また、試料の前処理や原子化にはさまざまな手法があります。
- 蛍光X線分析法(XRF:X-Ray Fluorescence Spectrometry)
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X線(1次X線)を試料に照射したとき、励起される蛍光X線(2次X線)を検出して元素の定性・定量を測定する解析法です。試料がX線を受けると内殻電子が外殻に飛び出して空孔が生じます。その空孔を埋めようと電子が移動するエネルギー差で発生する元素固有の蛍光X線から元素を測定します。蛍光X線を分光結晶で分光して検出する「波長分散型蛍光X線(WDX)」や、半導体検出器で蛍光X線を検出する「エネルギー分散型蛍光X線(EDX)」があり、測定する元素によって使い分けられます。
- レーザーアブレーションICP質量分析法(LA-ICP-MS:Laser Ablation Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)
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集光したレーザー光を固体試料の表面に照射し、蒸発させて微粒子化します。それをキャリアガスを使ってプラズマ内に導入し、分解・イオン化。そのイオンを質量分析計で測定することで、試料の局所的な部分の元素について調べることができます。
これらのほかにも、水溶液中の無機イオン・低分子有機酸・低分子アミン類の定性・定量を調べる「キャピラリー電気泳動法(CE:Capillary Electrophoresis)」や、水抽出した固体試料や溶液捕集した気体試料中の酸や塩基を測定する「イオンクロマトグラフィー(IC:Ion Chromatography)」などがあります。
LIBS解析による元素分析(無機分析)
ここまで紹介した各分析手法は、いずれも試料の前処理や検出器への導入、真空引きなどの手順に多くの時間や手間を要すことが大きな課題です。また、前処理やプロセスの難易度が高く分析者の熟練度が問われ、人員確保の問題につながります。以下では、工業材料などの無機分析における試料の前処理やプロセスの課題を解決し、無機分析を大幅に簡易化する「LIBS解析」の原理や特徴、種類、用途などについて説明します。
LIBS解析とは
LIBSとは、レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS:Laser Induced Breakdown Spectroscopy)のことで、発光分析法を使った無機分析の手法の1つです。レンズや反射光学系での集束によって高いエネルギー密度を持った短パルスレーザーを試料表面に照射することで、わずかに削られた試料表面をプラズマ化してサンプリング・原子化・励起を行います。レーザーを照射した部分が基底状態に戻るとき、放出される光の波長と強度を分光器やCMOSなどの受光素子を用いて測定することで、そのデータから試料が含有する各元素の定性・定量分析を可能とします。
LIBS解析の特徴や用途、装置の種類
LIBS解析では、固体試料を試料溶液などにする前処理や蒸留・噴霧、真空引き、キャリアガスなどを使った検出器への導入といったプロセスが不要です。固体試料であればそのままの状態で無機分析を開始できるため、他の分析手法と比べて多くの手間や時間、高い熟練度を要すことなく元素分析が可能です。また、解析装置は小型化が可能であるため、屋外など特定の用途では携行できるハンドヘルドタイプのLIBS解析装置が用いられることもあります。また、インラインでの原材料の選別などに応用されるケースもあります。一般的には、研究開発や材料の受入検査、製造工程での品質管理、品質保証などを目的に、マイクロスコープとLIBS解析装置を併用して観察や解析、元素分析を行うことで、対象物の外観から状態、成分構成までを確認します。なお、マイクロスコープとLIBS解析装置が一体になったタイプであれば、観察・解析・元素分析をシームレスに実行できるため、作業効率が飛躍的に向上します。
元素分析のメリット1:1台で観察・解析・元素分析を簡単かつシームレスに実行
LIBS解析による元素分析をデジタルマイクロスコープ1台で完結できます。前処理不要、4K画像で観察しながら簡単なクリック操作で元素分析をシームレスかつリアルタイムで実行できます。
高速なLIBS解析が可能なレーザ元素分析ヘッド EA-300シリーズをキーエンスのデジタルマイクロスコープ VHXシリーズに装着することで、観察光学系・レーザー光学系・分光光学系のトリプル光学系を実現。高解像度な観察と高精度な測定・解析に加え、LIBS解析による元素分析までを1台でシームレスに実行可能です。従来は、顕微鏡で観察した試料に前処理を施し、専門性の高い分析装置で元素分析する必要があり、多くの手間と時間、高い技能を要しました。一方、レーザ元素分析ヘッドを装着したVHXシリーズなら、拡大観察から2次元・3次元測定やコンタミカウントなどの自動解析、そして前処理不要のLIBS解析までを1台でリアルタイムかつ簡単な操作で実行できます。
元素分析のメリット2:連動機構で元素分析時の位置合わせやピント調整が不要
レーザ元素分析ヘッドを搭載したデジタルマイクロスコープなら、レーザ対物レンズとマイクロスコープレンズの2つのレンズがスライド移動して同じ視野を共有する「視野/フォーカス連動機構」を実現。元素分析時の位置合わせとピント調整が不要です。
レーザ元素分析ヘッド EA-300シリーズをデジタルマイクロスコープ VHXシリーズに装着することにより、レーザ対物レンズとマイクロスコープレンズがスライド移動することで同じ視野を共有できる「視野/フォーカス連動機構」を構築。これにより、元素分析時の位置合わせとピント調整が不要になりました。目的に最適なズームレンズを接続することで、低倍率から高倍率まで、あらゆる用途や対象物で効率的な分析作業が実現します。従来のように観察と解析装置が別の場合、観察箇所と元素分析として試料化する箇所を一致させることが困難でしたが、観察画面を見ながらクリック操作するだけで目的の位置での元素分析が可能なため、従来の位置ズレを解消することができます。
元素分析のメリット3:専門知識は不要。AIが元素名・物質名を瞬時にサジェスト
通常、検出した情報から元素や物質を判断するには専門的な知識が必要です。しかし、レーザ元素分析ヘッドなら取得した元素パターンからAIが含有元素と物質を示唆する「AI・サジェスト」機能で、各元素名と割合、物質名を瞬時に表示します。
デジタルマイクロスコープ VHXシリーズでのLIBS解析を用いた元素分析を可能とするレーザ元素分析ヘッド EA-300シリーズは、内部データベースに数千種類の元素パターンを保有しています。AI(人工知能)はその膨大なデータベースを使って検出した元素はもちろん、その物質名までを瞬時にサジェストします。物質データは階層で構成され、総称から固有の名称、さらにはその説明まで表示し、簡単に確認できます。また、自社での分析結果を蓄積していくことで、過去に同様の異物が検出された履歴を検索することも可能です。これにより、専門知識を持たない人でも分析対象の物質を瞬時に判断することが可能です。
元素分析の業界別導入事例
自動車・金属:スローアウェイチップが噛み込んだ異物の特定
レーザ元素分析ヘッド EA-300シリーズは、切削加工機に装着して使用しているスローアウェイチップを拡大観察して不具合箇所を特定できると同時に、そこに噛み込んでいる金属を分析することが可能です。観察視野と連動したポイントで元素分析(LIBS解析)を実行できるため、噛み込んでいる金属から検出された元素がチタンとバナジウム、アルミニウムであることから、Ti-Al-V系チタン合金と判明しました。これにより、検出した物質が加工対象物由来なのか、あるいは工程内の他の加工機器からの混入物なのかが瞬時にわかります。不具合原因を素早く特定でき、対策実施までの工数を大幅に削減します。
電機・電子:コネクタに付着した異物の特定
コネクタに異物が付着していると、接続不良・導通不良で製品不良や故障につながるばかりか、嵌合不良でオンボード部品の接点が破損するとPCボードごとロスになる場合があります。例では拡大観察(×50)で確認した異物をレーザ元素分析ヘッド EA-300シリーズで位置合わせすることなく高速LIBS解析し、Al(アルミニウム)とMg(マグネシウム)を検出。異物がAl-Mg系アルミ合金であることが判明。製品内部由来ではない物質を早期に特定できたため、製造工程の環境や装置の見直しが可能となりました。また、複数の箇所に異物がある場合でも、同時に元素分析することが可能です。このように、不具合現象の原因を効率的に特定できるため、早急な問題解決につなげることができます。
化学・素材:多層フィルムに混入した異物の特定
多層フィルムの拡大観察(×100)で混入を確認した異物をそのままレーザ元素分析ヘッド EA-300シリーズで元素分析し、内部の層からCu(銅)、Zn(亜鉛)を検出。異物が真鍮であることが判明しました。このように即座に異物の物質が特定でき、混入経路の判断材料を早期に得ることができるため、改善が必要な工程の特定や対策にかかる工数の大幅削減につながります。
食品・薬品:食品に混入した異物の特定
食品や薬品の製造において、製品への異物混入は安全性と信頼性に関わる大きな問題です。例では食品中の異物を拡大観察(×200)し、レーザ元素分析ヘッド EA-300シリーズでLIBS解析することで、Ca(カルシウム)、P(リン)を検出。異物の素材が骨であることが判明しました。従来は、顕微鏡だけでは色と形から仮説を立てることしかできず、分析を別部門または外部に依頼するなど、物質を判断するまでに時間を要しました。EA-300シリーズであれば、異物の外観を確認すると同時に、その場で瞬時に元素と物質が判別できるため、品質保証の充実と工程改善の飛躍的なスピードアップにつながります。
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Q.コンタミの元素分析・物質の判断に利用できますか?
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A.コンタミの測定・解析に加え、そのままコンタミの元素解析も可能です。レーザ元素分析ヘッド EA-300シリーズを装着できるデジタルマイクロスコープ VHXシリーズは、自動面積計測・カウント機能を活用して清浄度検査の国際工業規格ISO16232/VDA19に準拠したコンタミ測定・解析を行うことができます。さらに、微粒子の検出後、そのまま残留異物の元素分析(LIBS解析)の実施が可能です。コンタミの測定・解析のみならず元素分析と物質の判断に必要な一連の作業を1台で完結でき、装置間で試料を移動させる必要がないばかりか、視野/フォーカスの連動により対象とする微粒子を見失うリスクもありません。
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Q.斜めアングルからも元素分析は実行できますか?
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A.可能です。デジタルマイクロスコープ VHXシリーズは、視野・回転軸・傾斜軸の3つの軸を簡単に調整でき、傾けても視野がズレない「フリーアングル観察システム」と「高精度X・Y・Z 電動ステージ」を実現。それにより、さまざまな形状の対象物に対して、自由度の高い傾斜観察を正確かつ簡単に行うことができます。この観察システムに、レーザ元素分析ヘッド EA-300シリーズを装着することで、傾斜しないと見えない奥まった箇所も簡単に捉え、そのままワンクリックで高速LIBS解析による元素分析が可能です。傾斜観察時とLIBS解析時で視野/フォーカスが連動するため、狙ったアングルから対象物の任意の箇所に対して元素分析を実行できます。
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Q.視野内の複数箇所を元素分析したい場合、1箇所ずつ実行する必要がありますか?
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A.いいえ、レーザ元素分析ヘッド EA-300シリーズは、視野内の複数箇所を同時に元素分析することができます。たとえば、基材と付着物の元素を同時に分析したい場合や、同一対象物に複数の異物がある場合は、「多点分析機能」を使うことにより複数の箇所を選択して効率的に分析作業を実施できます。
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Q.コーティングしたものや多層構造を持つ対象物などの場合、表面以外を元素分析するために前処理が必要ですか?
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A.いいえ、コーティングまたは油膜がある対象物や多層フィルム、多層メッキされた対象物であっても、前処理なしで元素分析が可能です。レーザ元素分析ヘッド EA-300シリーズの「多層分析機能」を使えば、レーザーを連続的に照射することにより対象物にドリリングを施すことができます。それにより、前処理を必要とせずに対象物の最表面だけでなく、内部の多層物質も分析することが可能です。