現在、データ分析を強化している最大の理由は、急速に進む少子化への対応です。
英進館は1979年の創業以来、46年間にわたり一度も前年割れすることなく成長し続けてきました。これはM&Aによる規模拡大ではなく、自社のみでの「純増」によるものです。しかし、経営が安泰かといえば決してそうではなく、今後の成長に対しては強い危機感を持っています。
日本の出生数は1973年をピークに減少していますが、1980年から2014年までの35年間は、毎年約1%という緩やかな減少でした。このペースであれば、一人あたりの教育費増という「ボーナス効果」もあり、市場規模を維持できました。
しかし、2015年以降、減少の「勢い」が明らかに変わりました。特に直近5年は、毎年約4%という従来の4倍のスピードで子どもの数が減っています。このままでは現状維持さえ困難になるという危機感の中、出会ったのが「KI」でした。キーエンスからデータ分析のノウハウを学び、少子化の中でも成長し続けるための糸口を見出したいと考え、導入を決めました。
正直、すぐに効果が出るとは期待していませんでしたが、導入からわずか3か月足らずで、驚くべき成果につながったのです。
英進館株式会社
英進館株式会社 代表取締役社長 筒井 俊英氏、取締役 宮園雅樹氏、取締役 中村昌慈氏、営業部課長 理事 髙野耕司氏に、KIを導入した経緯とその効果について詳しく聞きました。
「少子化で競争率が高まる中、KIによるデータ分析と対策により、全教場において入塾者数が前年比プラスに転じました」
英進館株式会社について
九州を中心に展開する総合学習塾。九州各県および広島県に84の教場を持ち、生徒数は4万名を超えます。地元九州の最難関である久留米大学附設中学校では入学者の約8割超を同塾生が占め、日本最難関の灘高校においても合格シェア全国一を達成するなど、圧倒的な実績を誇っています。
| 創業 | 昭和54年4月 |
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| 年商 | 210億円(連結) |
| 従業員数 | 2,100名 |
※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数で記述しています。
課題・効果・評価
導入前の課題
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急激な少子化への対応
創業以来46年間、一貫して成長を続けてきたが、急激に進む少子化の中でも勝ち抜くため、データに基づく経営判断を模索 -
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当初の計画
「入試分析」「継続促進」「入塾増加」の3軸でのデータ活用を計画
導入効果
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夏期講習の申し込み数回復
中学生の全学年で前年割れしていた申し込み数を、KIを用いた「教場ごとの要因分析」と「成功事例の横展開」により、短期間で前年比プラスへ改善 -
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中学部(新中1) 継続率のV字回復
特定の進学校における継続率の低下(前年比3割減)を早期に発見・特定し、テコ入れにより翌年には回復 -
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合格判定精度の向上
模試の判定基準をデータで精緻化。翌年には久留米附設中・ラ・サール中への合格者の合計が同一入試日での過去最高260名を記録
KIへの評価
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伴走支援の質
キーエンスのデータサイエンティストはモチベーション管理に長けており、教育のプロから見ても「優れた教師」である -
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現場努力の可視化
本部からは見えにくかった「教場単位での地道な工夫」を数値で可視化できた
継続的な「急激な少子化」に対応するためKIを導入
データ分析に注力するようになった経緯を教えてください。
全学年で入塾数前年割れの危機を、データ分析で突破
「驚くべき成果」とは、具体的にどのようなものでしたか?
当初は「入試分析」「継続促進」「入塾増加」の3点に、1年ほどかけてじっくり取り組む予定でした。
ところが導入直後の6月、塾にとって最重要時期である「夏休み前」の中間集計で、中学全学年の申し込み者数が対前年で大きくマイナスという、過去に例のない事態に直面しました。
例年、本部は広告施策を打ち、各教場も友人紹介やチラシ配布などの努力を重ねて成長を維持してきました。しかし、その年はそれでも結果が出なかった。従来なら本部が「目標達成に向けて努力しよう」と精神論的な鼓舞をするのが限界でしたが、今回はすでにKIがありました。
急遽、キーエンスの担当者に「教場単位での流入経路分析」を相談したところ、KIの「要因ツリー機能」を使った分析を提案されました。
分析の結果は目から鱗でした。生徒数が伸びている教場は、友人紹介や兄弟紹介、校門前配布といった「現場の施策」をきわめて高い水準で実行しており、伸び悩む教場は本部施策への依存度が高いことが、データとして明確に現れたのです。
KIで「教場努力度」を可視化
分析の詳細について教えてください。
データサイエンティストの提案に基づき、教場独自の努力で入塾に至った生徒の割合を「教場努力度」として算出し、ランキング形式で可視化しました。
すると、努力度が60%近い教場は前年比プラスを達成している一方、20~30%と低い教場(本部依存度が高い教場)の多くは前年割れしていることが一目で判明したのです。
この分析結果をすぐに資料化し、翌日には全教場へ共有。その3日後には全教室長とのオンライン会議を開き、「現場の努力の差が、そのまま入塾数の差につながっている」ことを客観的な数字で紹介しました。さらに、結果を出している教場の具体的な取り組みをその場で共有しました。
数字を伸ばしている教場は、どのような工夫をしていたのでしょうか?
本質的な施策は同じですが、その「伝え方」の視点が全く違いました。
たとえば友人紹介についても、単なる集客活動としてではなく、「生徒自身の学習環境をより良くするためのアクション」として定義し直していたのです。ある教場では、生徒たちに対して次のように誠実に語りかけていました。
「無料公開テストに多くの友人が参加し、母数が増えることは、結果として君自身の合否判定の精度をより高めることにつながる。自分の客観的な立ち位置をより正確に知ることは、君にとっても、共に切磋琢磨する友人にとっても、最適な学習計画を立てる上での大きなメリットになるんだ」
このように、母数が増えることがいかに「自身の学びの質の向上」に直結するかを、生徒目線で徹底して伝えていました。こうした働きかけが、単なる「紹介」を超えて、生徒たちが「より正確なデータの中で自分の実力を試したい」という前向きな意識を持つきっかけになっていたのです。
また、生徒の小さな成長をプロ野球のヒーローインタビューのように表彰し、その様子を家庭に届ける「ヒーローインタビュー」という取り組みもありました。これが保護者の感動を呼び、Googleマップの好意的な口コミにつながる好循環を生んでいたのです。
分析から共有までわずか1週間足らず。これらの成功事例を全教場へ横展開した結果、夏期講習当日までには、全学年で前年比プラスへの転換を果たしました。これがKI導入による最初の大きな成功体験となりました。
原因が特定できれば、修正は容易
「中学部(新中1) 継続の回復」についても教えてください。
小学6年生が中学進学後も継続してくれるかは、塾経営の要です。データを分析したところ、ある有名な中高一貫校において、継続率が数年で3割近く減少していることが判明しました。
要因ツリー機能で深掘りすると、これは全教場共通の傾向ではなく、特定の数教場で10~20名単位の極端な減少が起きていることが分かりました。原因となる箇所さえ特定できれば、対策は可能です。担当講師の配置や施策を見直した結果、翌年にはV字回復を達成しました。市場が縮小する中、この「10~20名」の回復はきわめて大きな意味を持ちます。
経験則(肌感覚)のゆがみをデータで正す
「合否判定の精緻化」では、どのような発見がありましたか?
九州最難関の久留米附設中については、長年の実績から分析力には自信を持っていました。しかしKIで分析すると、模試の「C判定(合格可能性50%)」の生徒の合格率が、直近2年で50%を割り込んでいるという事実が浮き彫りになりました。
原因を探ると、「久留米附設中とラ・サール中の試験日程の重複状況」が影響していることが見えてきました。試験日が別日程になり、両校を併願できるようになった環境変化が、従来の判定基準との乖離を生んでいたのです。
これを受け、即座に判定アルゴリズムを改善。適切な進学指導をおこなえた結果、翌年の両校合計の合格者数は、予測を大幅に上回る過去最高の260名を記録しました。
さらに、現在、最も注力しているのは、合格者と不合格者を分ける「境界線」の可視化です。
これまで、入試本番の分析は、各教員の主観や一部の生徒からの聞き取りに頼らざるを得ない面がありました。しかし現在は、英進館が独自に収集している「入試直後の自己採点データ」と、その後の「実際の合否結果」をKIで紐付け、詳細な相関分析をおこなっています。
具体的には、入試問題を生徒の正答率に基づいて「難(低正答率)」「中(中正答率)」「易(高正答率)」の3段階に分類し、どのレベル、どの単元が合否に直結したのかを検証しています。
この分析によって、非常に興味深い事実が見えてきました。ある科目では「難問」を解けたかどうかが合否を分けるのではなく、「合格者の多くが得点しているが、不合格者の多くが落としている「中難易度」の特定単元」こそが、勝負の分かれ目になっていたのです。
また、別の科目では、正答率50%未満の問題の成否が、そのまま合否の境界線になっているといった傾向が、KIの要因分析によって明確な数値として示されました。
このような「データが指し示す合否の急所」は、すでに現場の指導に反映されています。
●教材への反映: 過去問の中から、合否を分けるポイントとなる問題だけを厳選した「必勝プリント」の作成
●カリキュラムの最適化: 合否への影響度が低い超難問への時間を削り、勝負所となる単元の演習時間を2学期以降の授業で重点的に増やす
こうした「受かるべくして受かる」ための、根拠に基づいた指導戦略を組めるようになったのは、KIによる緻密なデータ分析があってこそです。教師の経験則をデータが裏付け、あるいは時には覆すことで、指導の精度は格段に向上しています。
キーエンスの担当者は、我々から見ても「優れた教師」
キーエンスのデータサイエンティストへの評価をお聞かせください。
こちらのモチベーションを上げるのが非常に上手いですね。教育のプロである我々から見ても「一流の教師」だと感じます。褒め方が具体的で、参加者の名前と顔を一致させて呼びかけるなど、細やかな配慮があります。
相談に対しても、製造業的なアプローチではなく、塾業界の特性を理解した「的を射た提案」がすぐに返ってきます。KIという商品の力はもちろんですが、この伴走支援があったからこそ、現在のデータ活用体制が構築できたと確信しています。
進学塾にとって、合格実績は生徒や保護者との信頼の証であり、私たちの存在意義そのものです。しかし、少子化という大きな時代の転換点において、これまで通りの経験則だけに頼った指導では、生徒一人ひとりの夢を支え切ることは難しくなっています。私たちがKIの導入を通じて目指しているのは、長年の歴史で培ってきた「教師の熱意・皮膚感」と、KIがもたらす「客観的・精緻なデータ」の高度な融合です。
データは決して教師に取って代わるものではありません。むしろ、教師が「どの生徒に、いつ、どのような言葉をかけるべきか」を正しく見極め、一人ひとりの可能性を最大限に引き出すための強力な武器となります。データによって指導の迷いをなくすことで、教師はより一層、生徒の心に寄り添う教育に専念できるようになるのです。
英進館はこれからも、データ分析という確かなエビデンスに基づいた「勝てる戦略」を磨き続け、九州、そして日本を代表する教育機関として、次世代の教育のあり方を切り拓いていきたいと考えています。キーエンスの方々には、そうした取り組みを優れた技術、商品、サポートを通じて支援いただくことを希望いたします。今後ともよろしくお願いします。



